気付いていても解消できない施工現場のムリ・ムダ・ムラ
従来の建築プロセスで行われている施工現場では3M(ムリ・ムダ・ムラ)が構造的に多数存在します。そのために様々な問題が発生しています。
ここでは、現状存在している3M(ムリ・ムダ・ムラ)についてお伝えしています。
そしてこのような3Mを解消するためには、従来の建築プロセスから、BIMのワークフローを活用したフロントローディングへの転換が必要です。
ムリ:長時間労働 予算超過
1.施工現場における技術者の長時間労働
デスクワークの時間が取れない
現場の稼働時間は8:00~17:00だが、技術者は工事をしている時間は現場にかかりきりになっているため、書類作成などのデスクワークは17:00以降になってしまう
業務過多
安全関係書類、品質関係書類、会社提出書類、施工図、施工計画書、翌日の職人への指示書、その他資材関係の手配などの多くの業務に追われている
従事者不足
少子高齢化に伴う工事従事者不足、それを背景とする納期に間に合わせるための作業日確保や、日当で働く工事従事者の収入減少への配慮
建築業界は休みが少ない、労働時間が長いと言われています。それは使命感を持って工事に臨む技術者にとって自らの健康と家族に犠牲を強いる切実な問題です。
週休二日制が一般的になって久しい今日、いまだに多くの施工現場では週休二日制が実行されていません。
今後、公共案件では週休二日制の導入が進むものと思われますが、民間案件では発注者への配慮もあり難しいのが現状です。
さらに少子高齢化に伴う工事従事者不足も背景にあり、工期に間に合わせるための作業日確保や日当払いで働く工事従事者の収入減少への配慮もあり、週休二日制の導入を阻む要因になっているようです。
施工現場の稼働時間は8:00~17:00ですが、現場の技術者は工事をしている時間は現場にかかりきりになっているため、書類作成などのデスクワークは17:00以降に行なわれています。
安全関係書類、品質関係書類、会社提出書類、施工図、施工計画書、翌日の職人への指示書の作成、その他資材関係の手配などの多くの業務に追われるため、 長時間労働(時には休日出勤)が常態化しています。
なお、週休二日制が導入されたとしてもデスクワークの合理化や技術者の増員を図らない限り、 技術者一人当たりの長時間労働は解消されません。
2.予算や工期を守るための限度を超えた企業努力
厳しい競争環境のもと多くの産業でたゆまぬ企業努力が続いています。建築業界も同様です。
案件の受注を確実にするためには、競争力のある抑制された価格や工期の設定が求められています。
予定通り工事が進めば問題になることはありませんが、想定を超える不測の事態等に遭遇した場合は、施工事業者のコストの持ち出しや工期の圧縮等企業努力で凌ぐことになります。
しかし、それも限度を超えることになれば、建物の強度不足や工事現場の事故を誘発しかねません。
重大な結果に至らないまでも、過当競争に起因する企業努力が施工事業者の経営を圧迫したり、少なからず建築主の望むデザインや性能に悪影響を与えることも否定できません。
3.建築主に強いるムリ
建築主を含む建築関係者の事前の打ち合わせや各種設計図の調整が不十分であったことなどから、建築主の望んでおられたデザイン・性能・予算が満たされないことも少なからずあり得ます。
こうした状況においては専門家である設計者や施工事業者は規則に従って事前に十分な説明をし、かつ、同意を得たと展開される場合があり得ます。
このような情報の非対称性に基づくトラブルは場合によって建築主にムリ(我慢)を強いることになりかねません。
竣工後の建築主の「こんなはずじゃなかった」を皆無にしたいと願っています。
ムダ:工期圧迫や重複工事に伴う要員や建設資材の過剰負担
1.工期圧迫や重複工事に伴う要員増・超過勤務
建設業界は基本的に納期厳守で工期に間に合わせるように取り組んでいるため工期延長になることは滅多にありませんが、トラブルがあれば施工事業者にしわ寄せが来ます。
実際の工事現場では設計段階で発注者との協議が十分になされなかったことによる着工後の設計変更や設計内容が確定していなかったことにより手戻りが発生するなど、工程のとおりに進まないこともあります。
工事を中断すれば再開後の職人を確保するための「リザーブ」や、工期に間に合わせるための「要員増」「作業時間の延長」が見込まれます。そのコストは大雑把な概算見積もりに反映されることもあります。
2.着工後の設計者と施工事業者の度重なる打ち合わせ
設計者が着工前に施工に関する情報・データを十分に取り込むことができないため、施工事業者に完成度の低い設計図書を渡さざるを得ない建築プロジェクトでは、着工後、設計者と施工事業者との間で相当の頻度で「干渉チェック・納まり確認」等の打ち合わせが行われています。
そのため、施工事業者は施工に専念できず業務効率の低下を引き起こしています。
ムラ:設計変更や計画変更に伴う各種作業の一時中断・突貫作業
1.設計変更や計画変更に伴う各種作業の一時中断と突貫作業
工期中はできるだけ繁忙と閑暇が混在することなく作業が行われることが望まれます。
残念ながら、実際の工事現場では建築と設備の納まりが悪いことなど不具合が発覚した場合、職人の手が止まる問題が頻繁に起きています。
鉄骨製作の現場である鉄工所においてもラインの休止を余儀なくされることもあるようです。
また、各種施工事業者が決定して現場が始まると、さらに細分化された特定の専門施工事業者が存在するため、彼らの流儀に従うことから、設計段階で想定していた「納まり」では工事ができない場合もあります。
このような工事の一時中断は後にその遅れを取り戻すため、無理を承知の突貫作業につながりかねません。