「未完成設計図」問題とは
従来型の建築プロセスが抱える大きな問題の1つが「未完成設計図」問題です。
「未完成設計図」とは“着工後に明らかになる、不具合や未決定事項を残したままの設計図”のことです。
実は、着工時までに作られる「設計図」では建物は建てられません。なぜなら、不具合や想定外の問題や課題が多数内包されたままだからです。
しかし、従来の建築プロセスの流れでは、その「建物を建てられない設計図」で着工しているのです。
「従来の設計図」では建物は建てられない…とはどういうことか
設計図とは本来、
- 意匠・構造・電気設備・機械設備と4つに分類され
- それぞれの専門家により別々に作成され
- その後、図面間の矛盾点の洗い出しや調整を経て完成度の高い設計図書として施工者に手渡される
ものです。
しかし、実際に建てるために不可欠な図面間の調整や、施工に必要な決定事項が、施工段階に先送りされてしまうことが一般的でした。
その理由は、
- 施工者が特定されていない段階で
- 施工者が設計者に施工情報等を事前に提供することは困難かつ非効率
だからです。
結果生まれる、建築主が被る3つのリスク
その結果、施工者は「未完成設計図」を基に、施工図を作成し施工を開始することになります。
当然、細部が詰まってないため着工後多くの不具合が見つかり、工事のやり直しや停止が避けられない事態が起きることが少なくありません。
結果として、建築主にとっての「3つのリスク」が顕在化する可能性が高まります。
それは以下の3つです。
- 期待されるデザインと性能が得られない
- 建築コストの増加
- 工期長期化に伴う事業開始の遅延
建築主のご理解と、施工関係者の企業努力と協力
3つのリスクの顕在化を回避するために、どのような取り組みがなされているのでしょうか。それは、施工事業者と建築主の間でのギリギリの調整でしかありません。今のところ、根本的な解決策が存在するわけではないのです。
一部推測になりますが、
- 期待されるデザインや性能については建築主のご理解
- 建築主の建築コストの増加については施工者の企業努力
- 工期の長期化については建築工事従事者の献身的な協力
によって、なんとかゴールを迎えていると思われます。
根本的な解決策としてのフロントローディング
3つのリスクを最小化するためには
「設計段階から各分野の設計者及び施工者が協働し、設計図に施工情報を反映させるためのフロントローディング」
が必須となります。
加えて、フロントローディングをマネジメントするエンジニアの存在も必要不可欠となります。